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【中国不動産】「路上でマンション叩き売り」の衝撃 狼狽売りが招く“日本化”の悪夢
配信日時:2025年12月11日 10時30分 [ ID:10701]

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 2025年12月、かつて富の象徴であった「マイホーム」が、今や市 場の片隅で「卵」や「コメ」と共に並べられている。中国の地方都市で常態化し始めたこの異様な光景は、不動産神話の完全な崩壊と、オーナーたちが資産処分を急ぐ「狼狽(ろうばい)売り」の深刻さを浮き彫りにしている。

 中国南部の市場の一角で、バイクにまたがった男性が掲げる赤い看板には、驚くべき数字が躍っている。「1ルーム13万元、2ルーム29万元、3ルーム35万元」。日本円にしてわずか260万円程度からマンションが売りに出されているのだ。かつて投機マネーが流入し、価格高騰が続いたリゾート地や地方都市の見る影もない。さらに看板の下部には「無料で鶏卵を差し上げます」という文字まで並ぶ。不動産という高額資産が、集客のために卵を配らなければ見向きもされない「不人気商品」に成り下がった現実を突きつけている。これは単なる安売りではなく、なりふり構わぬ「在庫処分」であると言えるだろう。

 特筆すべきは、販売手法のあまりの零落ぶりだ。かつては大理石で装飾された豪華なショールームで、スーツを着たエージェントが販売していた物件が、今や薄汚れた路上で、手書きの看板を首から下げた仲介人によって売られている。さらに、男性は「五常大米(ブランド米)」の販売看板も重ねて掲げているが、これは不動産仲介だけではもはや生計が立てられないという、現地の不動産業界の苦境を示唆している。不動産流動性の欠如は関連する雇用をも破壊し、彼らをギグワーカー的な兼業へと追い込んでいるのだ。

 この光景は、バブル崩壊後の日本を彷彿とさせる、あるいはそれ以上のスピードで進行する「資産デフレ」の象徴とも言える。まず懸念されるのは狼狽売りの連鎖だ。「持ち家を売り急ぐ人」の急増は、将来の価格下落を織り込んだパニック行動であり、誰かが安値で投げ売りすれば市場価格はさらに下がり、資産価値の毀損を恐れた次の売り手が現れるという負のスパイラルが止まらない。

 次に、地方財政への打撃も深刻だ。写真にあるような地方都市はかつてリゾート開発で沸いたが、現在は供給過剰の「鬼城(ゴーストタウン)」化リスクに直面している。土地使用権の売却益に依存してきた地方政府にとって、この価格崩壊は財政破綻への入り口を意味する。

 中国政府は金利引き下げや購入規制の緩和など、矢継ぎ早に不動産支援策を打ち出している。しかし、市場の片隅で「卵」を餌にマンションを売ろうとするこの光景は、政策が実需に届いていないことを証明している。消費者のマインドは「資産形成」から「資産防衛・現金化」へと完全にシフトした。路上での叩き売りは、中国経済が直面するバランスシート調整の痛みがあまりに深く、そして長期化することを無言のうちに警告している。

 写真は単なる一場面に過ぎないが、その背景には数億人規模の資産価値喪失というマクロ経済の地殻変動が潜んでいる。中国不動産市場は、我々が想定するよりも遥かにドラスティックな価格暴落の局面に突入しているのかもしれない。

【編集:af】

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