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【タイ】前途多難! 舵取りが難しい、ペートンタン新首相10の緊急施策と現状
配信日時:2024年9月19日 12時00分 [ ID:9899]

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タイのイメージ(イサーン家庭料理)

 2024年9月12日、タイのペートンタン新首相が10の緊急施策を発表した。一見、現実的にも思えるものが並んでいるが、基本的にはセター前首相からの引継ぎと、以前からタクシン派が行って来た大衆迎合策とも思えるが、それぞれについて、現状の問題点などを見てみたい。

 ペートンタン首相が発表した10の施策とその現状。

1. 住宅ローンや自動車ローンにおける包括的な債務再編

 国民が抱える借金を精算するような試みは、過去のタクシン派政権でも行われて来たが、その効果については、大いに疑問視されている。つまりは、無ければ借りる。返せないから、踏み倒すという悪習を助長するだけになってきた。今回は、住宅や車と対象を限定してはいるが、主旨は同じ。

2. タイの起業家、特に中小企業の利益を促進し、外国の競合企業による不当な競争から保護する。

 保護主義的な政策として国外からの批判や下手をすれば、企業が国外へ逃げる可能性もあるため、さじ加減が重要となるだろう。関連していると思われる動きとして、7月から輸入品への課税対象額が1バーツからにされたが、これも物価のさらなる高騰に拍車をかける結果になりかねない。

3. エネルギーや公共料金のコスト削減のための措置を実施

 現在まで、石油に変わる代替エネルギーの導入は、一見すると日本よりも積極的に行われている。やはり、中国からの投資が多いが質的な部分で問題が起こらないかが懸念材料。実際、地方では断水や停電が少なく無い。
 
4. インフォーマル経済および地下経済を税制に取り組み、新たな政府歳入を創出

 タクシン政権時代に地下宝くじに対して試みているが、いつの間にか無くなり、今も地下で行われている。また、夜の娯楽店やフリーの娼婦、男娼について、職業として認める事で、社会的保障をする代わりに、所得税などの徴収対象を拡げる手もあるが、数十年続いている議論であり、保守層との落とし所は難しいだろう。

5. デジタル通貨の給付により経済を刺激し、雇用促進をはかる。

 これは、セター前首相政権がやりかけていた事だが、典型的なばら撒き。日本円にして約43,000円という金額的にも、すぐに使い切って終わるだろう。ごく一時的なものにしかならないと思われる。

6. 技術を活用して農業を近代化させる。

 技術と近代化について、具体的に何をするのかが重要になる。タイでも近年は食の安全性が注目されており、化学肥料や農薬の使用は減りつつある。それよりも、狭い範囲でしか販路を持たない農家に対して、もっと広い販路を提供できるマッチング的なシステムを構築する方がコスト的にも、農家の収入向上にも、いいと思われるのだが。

7. 調整したビザ制度を継続して観光を促進。

 新型コロナ終結後、中国人観光客誘致が思ったほど伸びない事から、厳しくなる一方だったビザ発給条件が、ビザ無しで60日の滞在が認められたことや長期滞在中に仕事もできるデジタルノマドビザが新設されるなどしている政策の継続。

8. 薬物問題を包括的に解決

 主には、大麻を薬物リストに戻すという方針に注目が集まっているが、現行法においても、趣向品としての売買や吸引は禁止されている。その為、これまで目溢ししていた部分を厳格に取り締まるだけでもいいばすだ。それよりも、医療分野での拡充を図るべきではないだろうか。

9. 国際犯罪、サイバー犯罪を解決し、タイ国民の利益を守る

 タイでも中国人や日本人などによるオレオレ詐欺や釣り広告詐欺の拠点が摘発されている。また、日本も含めて、世界から犯罪者が逃亡地としてタイに潜伏する事例も後を経たない。
 
10. タイ国民の社会福祉を促進し、発展させる。

 タイでも、少子高齢化が進んでおり、その勢いはアセアン諸国ではトップクラス。他の政策と共通している事として、財源の確保が最重要になるだろう。十分に裏付けされた財源がないままに実施された場合、第一期タクシン政権が華々しく打ち出した30バーツ医療のような財政破綻を招きかねない。

【編集:Ekkachai】

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