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インド政府は国営銀行の資本増強に、320億米ドルの資金注入実施を発表ーHSBC投信レポート
配信日時:2017年11月15日 3時30分 [ ID:4744]

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 2017年10月30日、HSBC投信は、臨時レポート(インド市場を見る眼~現地からの報告)を伝えた。

 インド政府は国営銀行の資本増強に、320億米ドルの資金注入実施を発表。今年12月に実施されるグジャラート州議会選挙は、モディ政権の改革への評価が問われ、2019年総選挙への試金石に。

(レポート)インド政府が過去最高水準の国営銀行への資本注入を発表

 インド政府は、国営銀行の資産の質と自己資本比率を巡る懸念への対処並びに経済成長の加速に向けて、今後2年間で国営銀行を対象とした資本増強のため2.1兆ルピー(約320億米ドル)を注入すると発表した。

 政府による待望の資本増強計画(2017-18年度GDPの約1.3%に相当)は、過去よりもはるかに大きな規模で、過去10年で政府が実施した国営銀行向けの資本注入額を上回る。

 資本注入の内訳は、208億米ドルが政府による「資本増強債券(recapitalization bonds)」の発行、89億米ドルが銀行による市場からの資金調達、28億米ドルが政府の既存予算枠からの拠出になると政府は10月24日に発表している。

 詳細については未だ明らかにはなっていないものの、大手格付会社は今回の発表を好意的に受け止めている。但し、2019年3月から全面的に適用される「バーゼル3」(バーゼル銀行監督委員会が公表する自己資本規制)の規定水準を満たし、バランスシートを健全化するためには、インド国内の銀行には更なる資本増強が必要と見られている。大手格付会社フィッチは、上記を満たすには追加的に650億米ドルが必要とする一方、同ムーディーズは上位11行の資本増強で約150億米ドルが必要と試算している。

 また、財政面での影響も定かではない。「資本増強債券」は政府が発行すると見られているが、インドの会計基準に基づく同債券の発行は財政赤字の悪化をもたらす一方、IMFの会計基準では資産売却や資本増強債券の発行はこの限りではなく、財政収支への影響はないと見られている。

 銀行の自己資本比率が高ければ、破産法による不良債権処理のスピードアップが期待でき、同処理において国営銀行は債務カットに応じやすくなる。また、自己資本比率の向上は銀行の貸出意欲を促進し、経済成長見通しの改善に寄与すると見込まれる。加えて、企業による銀行業界への信頼の向上と市場での資金調達の容易性にも繋がろう。

 今回の発表を受け、これまで膨大な不良債権と低調な貸出に悩まされてきた国営銀行の株価は大幅に上昇した。他方、民間銀行は、貸出の伸びの鈍化や不良債権問題に少なからず直面しているものの、今回の資本注入計画の対象には入っておらず、株価上昇の恩恵は受けていない。

 中長期的に見て、政府の資本注入はインド株式市場、通貨ルピー、ひいては経済にとり好材料と言えるものの、「資本増強債券」がバランスシートの重しとなり、国営銀行による新発債の買入れ額は減少、債券需給にマイナスに働き、利回りに上昇圧力がかかる可能性が考えられる。

 なお、政府は今回の発表で、過去最高水準に上る資本注入計画とともに、今後5年間に1,080億米ドルの道路建設を行なう計画を同時に明らかにした。いずれの計画もモディ政権による経済成長再加速計画の一環であり、今後予定される主要州議会選挙に向けて弾みをつける形となった。


グジャラート州議会選挙~モディ政権の改革成果が問われる

 インドの次回国政総選挙は2019年と未だ先であるものの、今年12月に実施されるグジャラート州議会選挙に向けて関心が高まっている。議席数が多く注目を集めるグジャラート州に加え、ヒマーチャルプラデシュ州及びその他インド北部の比較的小規模な州の世論調査結果は11月に発表される予定である。

 グジャラート州では、モディ首相率いる国政与党・インド人民党(BJP)が1995年以降、優勢を維持してきた。12月9日、14日実施のグジャラート州議会選挙は直近の10月25日に告示されたにも拘わらず、票獲得に向けた各政党の選挙活動は活発に行われている。

 モディ政権がこれまでに実施してきた構造改革は、インド経済に短期的にはネガティブな影響をもたらしたこともあり、12月のグジャラート州議会選挙は、モディ首相の再選を賭けた2019年総選挙の試金石と見られている。

 2017年7月に導入が開始された「物品サービス税(GST)」並びに2016年11月に突如実施された高額紙幣廃止の影響は足元の経済活動に一部混乱をもたらしており、野党はこの短期的な景気鈍化を批判することで、次期総選挙での政権交代の足がかりを狙っている。

 モディ首相はBJPの選挙活動支援のため、ここ数週間で州議会選挙が実施される複数の州を遊説している。BJP率いるモディ内閣は、グジャラート州での開発計画を複数打ち出すなど、有権者へのアピールを図っている。この間、GST委員会は、27分野の物品の減税に加え、一部には電子ファイリングシステムでの報告頻度を月次から四半期に変更するなどの措置を実施している。

【編集:AO】

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