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【ミャンマー】農村で幻のヤシ酒を味わう 樹液が木の上で発酵する不思議
配信日時:2017年4月3日 9時00分 [ ID:4239]

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ヤシ酒は白く濁り、甘酸っぱい香りがする(ヤンゴン郊外、撮影:北角裕樹)

 2017年4月3日、ヤンゴン郊外の農村で、街中では手に入らない幻のヤシ酒「タンイエ」にありつくことに成功した。ヤシといってもココナツではなく、シュロやトッティと呼ばれる多数の小さい実がなるヤシ科の植物から作る。自然発酵であるため保存が効かず、農村部のシュロの木が生えているエリアでしか味わうことができないのだ。

 この酒がユニークなのは、実を発酵させるのではなく、高い木の上で切った枝から滴る樹液をためて酒にする点だ。半日程度で壺がいっぱいになるが、貯めている間も発酵が進み、朝晩に壺を回収する時にはすでに発酵による泡でいっぱいになっている。さらに数時間待つと、ちょうどよい飲み頃になるという。

 筆者が訪れたのは、ヤンゴン郊外のタンリン地区にあるチャイカウ・パゴダの門前にある村だ。タンイエは古都バガンなどミャンマー中部が有名だが、タンリンでも飲めると聞いて飲める場所を探し回った。パゴダ近くでシュロの実を販売している屋台が並んでいたので聞き込みをすると、近くの村にタンイエを出す店があることが分かった。村の奥に入ると、草ぶきの掘っ立て小屋のような軽食店があった。土の上に建てた高床式の座敷がある。聞くとタンイエがあるという。

 タンイエは、ゆうに1リットル以上はありそうな素焼きの壺で提供された。壺ひとつで2,000チャット(約160円)。店の主人によると、このタンイエは村の近くの木で取ったものだという。プラスチックのコップですくってグラスに移して飲む。口にすると、まず舌にわずかな炭酸を感じる。そして発酵食品特有のほのかな酸味に加え、柔らかい甘みを感じる。この間も発酵が進んでいるため、時間がたつと味が変わるという。アルコール度数は低いようだが、それでも大量に提供されるので酔いが回る。

 樹上で壺で樹液を集めるという性質から、ミャンマーでは5月中に始まる雨季に入るとタンイエは姿を消す。今だけしかも都会にはないまさに幻の酒だ。タンイエを飲むために都会を離れて農村を訪れる旅に出る価値はあるだろう。

【執筆:北角裕樹】

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