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【コラム】21世紀の世で、コロナにアヘンとはー北朝鮮
配信日時:2022年6月8日 6時00分 [ ID:8100]

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厚生労働省資料から

 清とイギリスの間に、アヘン戦争が起こったのは、1840年から1842年のことだった。麻薬というのは、医薬品だけでなく、非合法のものがどの時代でも民間の間で人知れず流通している。

 アヘンは、芥子の花からその成分が取れるという。日本国内でも、ごくまれに、勝手に群生した芥子がニュースになることもあるし、園芸マニアが麻薬原料と知らずに芥子でガーデニングして摘発されることがある。

 大麻愛好家というのも存在するが、便利な時代、お金を出せば麻薬を手に入れることができるから、あえて芥子からという人は少ないと思っていた。

 2022年5月、あれほど頑なに罹患者は一人もいないと言っていた北朝鮮でもとうとうコロナ禍になった。ワクチンは、まずは軍隊からであり…ワクチンを接種しても絶対にコロナに罹患しないというものでもないから、毎日患者が出ている。もともと医療体制に乏しい北朝鮮では、多くの死者数が公式ではないルートで報告される。

 それでも、政府に関係している者の家族は多少の優遇はあると思いたかった。5月27日、政府の仕事をしている者の妻子が急逝した。

 一般的な鎮痛解熱剤は、品薄。これは、政府の仕事をしている「以上」の者しか手に入らないのは容易に推測できる。次に手に入りやすいものは、中国製の鎮痛解熱剤だが、これには、麻薬成分が含まれると言われている。だが、それすら買えない国民は多く、病院に行っても「まだ支援のない現在」は、満足な薬も治療法もない。

 さて。北朝鮮では協同農場で、アヘンの元となる芥子を栽培している。共同農場はかなり厳重な警備がなされているが、ほんの数秒目を離したすきに、食糧不足に陥っている北朝鮮国民は盗みという手法で、食糧確保をする。

 芥子の効き目に関しては、民間療法的に昔から伝えられているので、自家畑での栽培もしている。下痢止めや痛み止めとして、普通に家庭にある。盗むにせよ育てるにせよ、芥子は手に入る。病院で薬をもらうより簡単だ。

 亡くなった妻子は、中国製の鎮痛解熱剤を飲んだうえで、効果がない(コロナの下熱に関しての知識は北朝鮮にはないだろう)。その上で、自宅にあった、芥子を飲んだ。麻薬の過剰摂取だが、芥子は芥子であり、麻薬=アヘンの認識はなかった。結果として命を落とした。

 これに対して政府や自治体は、アヘンを使うものこそ愚かとした。

 世界中が、コロナの治療薬にかかわらず、あらゆる薬の供給が滞っているにも関わらず、北朝鮮内での自主製造と使用命令を出しただけだ。今の北朝鮮では、それしか言えないのも、理解はできる。しかし、当たり前に、民間薬としてのアヘンの方が手に入りやすいとは…ミサイルを飛ばしている暇などないだろう。

 アヘン戦争から180年もの時間が経っても、まだまだアヘンが頼られる国があるとは、命がけの薬だとしても。

【編集:fa】

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