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尹政権が日韓関係改善に全力投球! インド太平洋戦略で米国と歩調を合わせ、中国の野心を抑える
配信日時:2023年3月26日 10時00分 [ ID:8784]

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内閣広報室提供写真(2023年3月16日)

 2023年3月、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が来日し、岸田文雄首相との首脳会談で未来志向の新しい日韓関係を宣言した。この会談は、両国間の最大の懸案である「徴用工」問題を早期に解決することで一致したことが最大の成果とされた。しかし、その具体的な方法や内容は明らかにされておらず、日韓両国の国内世論や政治状況に左右される可能性が高い。尹政権はなぜ、日韓関係改善に積極的な姿勢を見せているのだろうか?

 尹政権にとって、日韓関係改善は内政と外交の両面で重要な課題である。内政面では、前政権の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が推進した反日路線が国民の支持を失い、経済や社会の分断を招いたことを反省している。尹大統領は選挙期間中から、「歴史問題は歴史家に任せて、未来志向の協力関係を築く」という方針を示しており、日本との問題を与野党対立や政治利用にしないという姿勢を貫いている。また、新型コロナウイルス感染症の影響で打撃を受けた韓国経済の回復にも、日本との協力が不可欠であることを認識している。尹政権は、半導体や自動車などの産業分野で日本と競争しながらも協力する「競合」関係を目指しており、岸田首相との会談では、日本が厳格化していた半導体原材料などの輸出規制を解除することで合意した。

 外交面では、北朝鮮や中国などの安全保障環境の変化に対応するためにも、日韓関係改善が必要であることを尹政権は理解している。北朝鮮は核・ミサイル開発を続けており、中国は台湾問題や南シナ海問題などで強硬姿勢を強めている。これらに対抗するためには、米国と同盟関係にある日本と韓国が連携することが重要である。尹政権は、米国のバイデン政権が推進するインド太平洋戦略に参加することで、米国との同盟関係を強化し、中国に対する抑止力を高めるという意図があると見られる。尹政権は、日本とも安全保障協力を推進する重要性を確認し、日韓の安全保障対話を再開し、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を安定的に運用していくことで合意した。また、日韓両首脳は、形式にとらわれず頻繁に往来する「シャトル外交」を再開することでも一致した。

 これらの動きは、尹政権が日韓関係改善に真剣に取り組んでいることを示しているが、それだけでは「昔は仲悪かったよね」と笑える日が来るとは限らない。日韓関係の改善は、両国の国内政治や世論の変化に大きく左右されるからだ。特に、「徴用工」問題は、日韓関係の最大の障害であり、両国の法的・歴史的な認識の相違が深刻である。尹政権は、日本側が受け入れられる解決策を提示したと主張しているが、その内容は公開されておらず、日本側も評価しつつも慎重な姿勢を崩していない 。また、韓国内では、被害者や支援団体などが政府の方針に反発し、裁判所も日本企業の資産差し押さえや売却などの手続きを進めている。これらの事態がエスカレートすれば、日韓関係は再び冷え込む可能性がある。

 尹政権が日韓関係改善を急ぐ理由は、内政的・外交的な利益や必要性に基づいている。しかし、そのためには、日本側の誠意ある呼応や協力だけでなく、韓国内の政治・社会的な説得や説明も欠かせない。尹政権は、「徴用工」問題を含めた歴史問題を歴史家に任せて未来志向の協力関係を築くという方針を貫くことができるだろうか? 日韓関係の未来は、尹政権の行動次第で大きく変わり得る。

【編集:LF】

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