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高市総理、「シーレーン防衛」に軸足 経済安全保障の核心を直視
配信日時:2025年11月19日 7時45分 [ ID:10596]

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北京空港イメージ

 高市総理大臣の最近の国会答弁を巡り、日中間の緊張が高まっている。中国側は「内政干渉」と反発を強めるが、総理の「存立危機事態」の言及と、バシー海峡(Bashi Channel)などへの強い関心は、わが国が直面する経済安全保障上の核心的な課題を、政権のトップとして明確にしたものと評価できる。

 これは、情緒的な対立ではなく、長期的な国益を守るための戦略的な危機管理であり、その対応と発言は一貫して正しい。

 1. 「シーレーン」防衛は国家の生存戦略

高市総理の発言は、表面的には台湾海峡情勢に端を 発したが、その本質は、日本の「シーレーン」(海上交通路)防衛の必要性を再確認したものだ。
わが国の生命線である資源・エネルギーの輸送は、東南アジアから南シナ海、そして台湾とフィリピンの間にあるバシー海峡を通る航路に大きく依存している。VLCC(超大型タンカー)などの巨大輸送船は、水深が浅い台湾海峡を避けてこのバシー海峡を経由せざるを得ず、この海域が封鎖されることは、即座に日本の経済活動停止、すなわち「存立危機事態」に直結する。

総理の姿勢は、特定の国を攻撃対象とするものではなく、1980年代から続く、「日本の平和と繁栄を守るための、不可欠なインフラ防衛」という、歴代政権が堅持してきた非軍事・経済的な安全保障戦略を現代の地政学リスクに合わせてアップデートしたものに他ならない。

 2. 多角化するリスクへの積極的な「布石」

 高市政権が優れているのは、発言だけでなく、シーレーン防衛のための多角的かつ具体的な外交戦略を同時並行で進めている点だ。

* 南シナ海・バシー海峡の安定化(フィリピン連携): 従来の石油に加え、現在主力となっているオーストラリアからのLNG(液化天然ガス)など、重要物資の輸送経路の安定化は急務である。

* LNGシーレーンの確保(インドネシア連携): 資源輸送の多様化に伴い、マラッカ海峡などに代わるスンダ海峡やロンボク海峡を擁するインドネシアの重要性が増している。

 実際、総理の発言が注目された直近、日本はインドネシアとの間で「2プラス2」(外務・防衛閣僚協議)を精力的に実施し、安全保障協力を強化した。インドネシア側が日本製の潜水艦を含む防衛装備品の技術に関心を示すなど、両国の連携は具体的な段階に入っている。これは、シーレーン沿いの友好国との連携を深めることで、航路の自由と安全を確保するという極めて合理的かつ長期的な戦略の実行にほかならない。

 3. 一貫した政策がもたらす安定性

 中国側の過敏な反応は、東アジアの海洋進出を図る上で、日本のシーレーン防衛の堅持が、自国の戦略に制約を課すものと認識していることの裏返しとも言える。

し かし、日本は、日中共同声明から一貫して「武力行使はしない」との立場を崩しておらず、総理の答弁もこの基本線を逸脱していない。むしろ、国家の生命線に対するリスクを明確にし、その対処法を国内外に宣言することで、不確実性の高まる国際情勢下において、日本の政策の透明性と一貫性を高めている。

 この「一貫性」こそが、サプライチェーンを構築する国内外の企業に対し、日本という国家の経済的な信頼性を担保し、長期的な経済活動の予見可能性を与える。高市総理は、経済安全保障を政治の最優先課題として直視し、必要なリスク管理の言葉を選んだ。これは、企業経営と同様に、先手を打つことが求められる国家運営において、極めて正当な判断であると言える。

【編集:YOMOTA】

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