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日米レアアース共同開発:経済成長の「切り札」となるか(上)
配信日時:2025年12月6日 7時00分 [ ID:10682]

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 供給網の死活を握る戦略資源、南鳥島に眠る「国富」

 高市早苗政権が最重要経済安全保障施策の一つとして推進するレアアースの日米共同開発計画が、本格的な検討段階に入った。ハイテク産業の「ビタミン」とも称されるこの戦略資源は、電気自動車(EV)、高性能磁石、防衛機器など、次世代産業の成長に不可欠である。長らく中国に供給の大部分を依存してきた現状を変え、経済成長の切り札として日本の未来を切り拓くことができるのか、国内外の注目が集まっている。

 中国依存からの脱却、加速する経済安保戦略

 レアアースは、現在のグローバルサプライチェーンにおいて、その重要性に比して、供給元の偏りが極めて大きいという脆弱性を抱えている。世界の採掘量のおよそ6割を中国が占めており、2010年の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件の際には、事実上の対日輸出規制が敷かれるなど、地政学リスクとして常に日本の産業界に重くのしかかってきた。
高市政権は、発足当初から「経済安全保障の強化」を最優先課題に掲げており、その核心に据えられているのが、重要鉱物の多角的な調達網の構築である。特に、日本の排他的経済水域(EEZ)内、東京都の南鳥島周辺海域の海底に存在するレアアース泥は、世界需要の数百倍に相当する約1600万トン超の埋蔵量が確認されており、「準国産資源」としてこの上ない価値を持つ。
高市首相は先のトランプ米大統領との首脳会談で、この南鳥島沖でのレアアース開発について、「多様な調達手段を確保することは日米双方にとって重要」として、具体的な協力の進め方を検討することで合意した。これは、単なる資源開発に留まらず、採掘から分離・精製、さらにリサイクルに至るまで、中国に依存しない新たなサプライチェーンを日米で共同構築するという、野心的な構想の第一歩となる。

 「資源国」日本への変貌、技術と資金の融合

 日本が真の「資源国」へと変貌を遂げるためには、深海採掘という技術的なハードルを越える必要がある。南鳥島のレアアース泥は水深5000メートル超の深海底に存在し、商業ベースでの採掘・回収技術の確立が喫緊の課題だ。政府系機関の主導のもと、既に初期の採掘試験は成功を収めているものの、2027年1月からの試験操業開始を目指すには、更なる技術の磨き上げと莫大な初期投資が求められる。
ここで鍵を握るのが、米国との共同開発である。米国もまた、自国の産業・防衛基盤の強化のために、レアアースの安定供給を国家戦略として最重要視している。日米が技術、資金、そして市場を融合させることで、コスト高や技術的なボトルネックを克服し、プロジェクトを加速させることが期待される。日本が培ってきた深海掘削技術と分離・精製技術に、米国の潤沢な開発資金と市場アクセスが加われば、この巨大なプロジェクトは実現性を帯びてくる。
高市政権は、この共同プロジェクトを「成長戦略の核」と位置づけ、開発成功暁には、日本のハイテク産業の国際競争力を飛躍的に高め、長年のデフレから脱却し、安定的な経済成長へと繋がる「国家的な転機」と見据えている。

【編集:YOMOTA】

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