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中国の経済危機と不動産バブル崩壊、金融機関の経営悪化とデフレ化の危機が高まる
配信日時:2023年8月23日 15時30分 [ ID:9160]

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 2023年8月、中国が発表する経済指標や企業の決算も、粉飾的な数字である可能性が高く不透明感が強い。真実は誰にも分からないと言われている中国。不動産市場の急激な悪化が経済に深刻な影響を及ぼしている。政府が不動産デベロッパーの過剰債務を取り締まったことに加え、新型コロナウイルスの流行で景気が減速したことが響いた。不動産市場は中国経済の柱であり、住宅価格の下落や販売低迷は消費者心理や信用市場にも打撃を与えている。特に、中国最大の不動産デベロッパーである中国恒大集団が債務超過に陥り、デフォルト(債務不履行)の危機に直面していることが、金融システムに大きなリスクをもたらしている。

 中国恒大集団は7月17日、2期連続公表を控えていた2年分の決算を発表した。それによると、2022年末時点で負債総額が2兆4000億元(約47兆円)に達し、負債が資産を上回る「債務超過」に転落した。負債総額約47兆円といえば、日本の国家予算(2023年度一般会計総額)の約114兆円の4割以上にあたる。恒大集団はドル建て社債やオフショア債などを多額発行しており、海外投資家も多く保有している。そのため、恒大集団がデフォルトすれば、国際金融市場にも混乱を招く可能性がある。

 恒大集団だけでなく、他の大手不動産デベロッパーも経営悪化が相次いでいる。碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)は2022年1~6月期決算で、純利益が前年同期比で96%減になった。政府は不動産部門の信用の伸びの安定を維持し、新型コロナ流行で打撃を受けた住宅購入者を支援する方針だが、市場関係者は需要喚起効果は限定的と分析している。

 不動産バブルの崩壊は中国経済全体に波及する危険性が高い。不動産開発はGDP成長率を押し上げる要因だったが、逆にGDP成長率を押し下げる要因に変わった。また、中国人の個人資産のうち、不動産は実に7割を占めており、住宅価格の下落は消費者の購買力や信頼感に影響する。さらに、不動産開発に関連する多くの産業や雇用も打撃を受ける。鉄鋼やセメントなどの建材や、家具や家電などの住宅関連商品の需要が減少するだけでなく、建設労働者や不動産仲介業者などの雇用も減る。不動産開発は中国経済の約30%を占めているとも言われており、その縮小は中国経済にとって大きなマイナスだ。

 不動産バブル崩壊の影響は金融機関にも及ぶ。不動産デベロッパーは住宅ローンを含む家計向け融資の大きな借り手であり、デフォルトすれば金融機関の資産価値が低下する。また、住宅購入者も住宅価格の下落により、自己資金がマイナスになる「逆ザヤ」に陥る可能性がある。逆ザヤになれば、住宅ローンの返済を止める人が増えるかもしれない。4月の新規着工は前年比44.19%減と、新型コロナ流行初期の2020年1~2月以降で最大の減少を記録した。デベロッパーも、資本を維持するため、新規の建設を抑制しており、潜在的な住宅購入者が直面する不透明感が強まっている。今月の公式統計によると、4月の人民元建て融資は急減した。新型コロナの流行で経済が混乱し、信用需要が低迷したことが浮き彫りとなっている。

 中国経済は不動産バブル崩壊により、デフレ化の危機に直面していると言えるだろう。デフレとは物価水準が下落する現象であり、消費者や企業が支出を控えることで経済活動が停滞する悪循環に陥ることがある。日本は1990年代から長期にわたってデフレに苦しんだ経験がある。中国では今年はこれまでに100都市以上が、住宅ローン金利・頭金の引き下げや補助金を通じて、住宅需要を喚起する対策を導入したが、政府が複数の都市で厳格な新型コロナ規制を導入したことから、消費信頼感が冷え込んでおり、先行きは依然として厳しい。

 中国政府は今後どのような対応を取るかが注目される。中国政府はこれまでGDP成長率を重視してきたが、今後は不動産市場の安定化や金融システムの健全化を優先する必要がある。

【編集:LF】

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