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聖金曜日の奇跡を纏う——シキホール島、秘儀「Tuob」の深淵
配信日時:2026年3月23日 14時00分 [ ID:10983]

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 ヒーリング2日目、私はこの島の核心ともいえる儀式「Tuob(トゥオブ)」に立ち会った。これは薬草を煮出した蒸気や煙で身体を燻(いぶ)し、心身の浄化と回復を試みるフィリピンの伝統療法だ。

 その準備は、キリストの受難を象徴する「灰の水曜日」から始まる。ヒーラーたちは聖金曜日までの40日間、森や海、ときには深い洞窟へと分け入り、特別な力を宿した植物を採取するという。

 なかでも驚かされたのは、「Buhok Maria(マリアの髪)」と呼ばれる細長い繊維状の植物だ。ヒーラーに促されるまま、ちぎったそれを舌に乗せると、湿り気を得た植物が生き物のように自発的に動き出した。静寂のなかで蠢くその姿は、自然界の未知なる生命力を見せつけられているようだった。

 儀式が始まると、私はマントを深く被り、ハーブを焼く煙に包まれた。椅子の下から立ち昇る濃密な香りのなか、ヒーラーは呪文を唱えながら私の額に聖なるオイルを塗り込んでいく。外界を遮断された空間で、負のエネルギーが霧散し、身体が再編されていくような感覚に陥る。

 かつてスペイン人が「黒魔術の島」と呼び、畏怖したシキホール。そこには、単なる迷信ではない、植物と人間が共生してきた確かな知恵が息づいていた。儀式の後、私は守護の力を宿したアミュレットとオイルを手に、この島の懐の深さを改めて噛み締めた。

【編集:「フィリピン盛り上げ隊」ヒロット大使・山口理津子】

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