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坂口貴徳 氏のCVCが目指す「共創インフラ」と低賃金・長時間労働からの脱却、美容業界の構造改革
配信日時:2025年11月5日 7時00分 [ ID:10512]

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坂口貴徳 氏

 世界的にSDGsやウェルビーイングが経営の重要課題となる中、日本国内で約25万軒とコンビニの約4倍の店舗数を誇る美容業界が、その構造的な課題に直面している。長らく「低賃金、長時間労働、閉鎖性」という負の側面を抱えてきた同産業において、現在、変革を主導する動きが注目を集めている。

 その中心人物が、株式会社CHAINONエンターテイメントの坂口貴徳氏(39)だ。同氏が主導するCVC(Change × Volunteer × Challenge)と称する新たなビジネスモデルは、全国の美容師の間で「業界のインフラ」として関心が高まっている。

 坂口氏が美容業界を志したのは10代だが、現場での経験を通じて、個人の努力では変えられない業界構造の限界を痛感したという。特に、給与体系やキャリアパスの不透明さなど、旧態依然とした労働環境に対し、オーナー側から「嫌なら辞めたらよい」という反応を受けたことが、構造変革を決意する契機となった。

 29歳で独立を決意した坂口氏は、書籍などを通じて理念を固め、オンラインサロン運営やクラウドファンディング(200万円調達)を経て、大阪で最初のサロンを開業した。独立直後に発生したコロナ禍では、多くのサロンが人件費削減に踏み切る中、坂口氏は「全従業員を守る」という理念を貫き、給与を維持した。この決断が従業員と顧客からの高い信頼を築き、結果的にSNSを介したファンとスタッフの急増につながった。

 同社はわずか数年で売上10億円、従業員160名規模の組織へと急成長を遂げ、理念に基づいた経営が競争力の源泉となり得ることを証明した形だ。

 成長に伴い、坂口氏が次に取り組んだのは、従来の美容室に特有の「店長制度」の廃止。代わりに、現在はSV(スーパーバイザー)が担う「コミュニティマネージャー制度」を導入し、上意下達の「縦の組織」から、従業員個々の強みを活かす「横の共創チーム」への転換を図った。

 これは、個人の技能に依存する「属人化」を負と捉えず、むしろ個性を最大限に活かす「タレント化」を推進するマネジメント手法であり、「究極の属人が辞めないチームが最も強い」という独自の哲学に基づいている。

 フリーランス化が進む美容業界では、個人の孤立や経営ノウハウの欠如が新たな課題となっている。これに対し坂口氏は、共通の理念を持つ美容師が緩やかに連携する「CVC(ボランタリーチェーン)」を生み出した。

 CVCは、加盟金無料(現時点)で、月額10万円のサブスクリプションを通じて、教育、集客、物件情報、仕入れ、決済といった美容室運営の基盤となるノウハウとツールを包括的に提供する。すでに全国で90社以上が加盟し、1年で1,000社の構築を目指すという。

 坂口氏はCVCの目的を「勝ち組サロンを増やすこと」ではなく、「共に勝つ文化」を創造することに置く。坂口氏が目指すのは、「美容師が日雇いのように体を売る時代」を終わらせ、「価値を売る時代」への移行だ。 CVCを通じて加盟サロン同士が競争ではなく「共創」の関係を築くことで、「信用の複利」という独自の概念が働くとしている。

 将来的には、CVCを美容師が独立した際に「まず入るのが当たり前」とされる“美容業界のインフラ”として確立させ、決済の最適化から教育、物件情報まで、業界全体の共通基盤となることを目指している。坂口氏は「CVCという『村』を、競争ではなく共創で業界を変えるための、みんなの会社にしたい」と語り、美容師一人ひとりの未来に新たな選択肢を提供することを目指す姿勢を強調した。

株式会社CHAINONエンターテイメント.
株式会社JUNO JAPAN.
大阪市北区芝田1-10-10芝田グランドビル407.
電話番号 06 6459 7990.
メール info@junojapan.co.jp

【編集:Y.U】

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