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日本の耐震技術に期待「高層階の悪夢! 激しい揺れに住民悲鳴」ミャンマー地震でバンコク高層ビル崩壊
配信日時:2025年4月2日 14時30分 [ ID:10166]

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倒壊した33階建の国家監査庁舎ビルと現場周辺(そむちゃい吉田撮影)

 2025年3月28日に発生したミャンマー地震は、遠隔地ながらタイの高層建築物に大きな影響を与え、タイの人々に深刻な不安を広げている。特に、高層ビルで経験したかつてないほどの長周期地震動は、バンコク市民に計り知れない恐怖と動揺をもたらした。

 地震直後、高層コンドミニアムの住民からは、以下のような切実な声が上がった。

「住んでいた高層階は激しく揺れ、まるで船に乗っているようだった。立っているのがやっとだった。」
「エレベーターが停止し、非常階段での避難は暗く、非常に危険で恐怖を感じた。」
「高層階からの避難には時間がかかり、もし建物が倒壊したら逃げ遅れるのではないかと、強い不安に襲われた。」
「地震後、住居の壁や柱に複数の亀裂が見つかり、建物の構造的な安全性に大きな不安を感じている。」
また、バンコク在住の日本人も、「コンドミニアムの15階にいたが、日本で経験した地震よりも強く、これまで感じたことのない異様な揺れだった」と語り、その衝撃の大きさを物語っている。

 地震による影響は高層コンドミニアムに限らず、多くのオフィスビルや商業施設、低層アパートなどでも、安全確認が完了するまで一時的に入館が制限される事態となった。深夜まで安全確認を待つ施設も少なくなかった。また、自宅への入室が許可された後も、余震への不安から屋外で夜を明かす人や、すぐに荷物をまとめて住居から退出する人も見られた。

 こうした広範な不安が広がる中で、日本の建設会社に対する評価が改めて高まっている。特に、タイ大林が手掛けた「O-NES TOWER」が、タイ国内でわずか2例目となる国際的な環境性能評価認証「LEED認証」と、WELL認証の両方でゴールド認証を取得している点が注目を集めている。環境性能だけでなく、居住者の健康や快適性にも配慮した同タワーの建設実績は、安全性を重視する人々にとって改めて評価される要因となっている。有識者の間では、耐震基準見直しにはこうした日本の知見を求めるべきだという意見が多い。

 以前からインターネット上では、タイには耐震基準がないといった不確かな情報も流れていたが、実際には日本よりも低いものの、耐震基準自体は法的に定められており、2025年1月にも改定され強化されたばかりである。しかし、その設計思想は、地震の多い日本における「限界耐力設計」とは異なり、地震時に建物に発生する応力が、建物の構造部材が許容できる範囲内であるように設計する「許容応力度設計」に基づいている。

 バンコク都では、地震後の建物の安全性について、オーナーやデベロッパーに対して迅速な報告を要請しており、これを受けて、一部のコンドミニアムデベロッパーからは、建物の安全性に関する調査レポートが提出され始めている。

 一方、今回の地震で倒壊したビルの建設を請け負っていた中国国営企業である中鉄十局に対しては、基準を満たさない鋼材が使用されていた疑惑も浮上しており、市民からの批判が日増しに高まっている。報道によると、同社はこれまでにタイ国内で少なくとも以下の14件のプロジェクトを受注していたことが判明している。

中鉄十局のタイにおける主な受注プロジェクト一欄

2019年:
ナラティワート空港:新しい旅客ターミナルと施設(6億3,990万バーツ)ーCIS JVで受注
Phuket Housing Project: Townhomes(3億4,320万バーツ)ーAGC10 JVで受注
ワット・アマリンタララム学校(1億6,070万バーツ)ーAGC10 JVで受注

2020年:
チャクリ・ナルエボディンドラ医学研究所: 倉庫(1億4,610万バーツ)ーAGC10 JVで受注
プーケット・ラチャパット大学:学生寮(1億3,210万バーツ)ーWGC10 JVで受注。
プレー県政府総合庁舎:新築ビル(5億4000万バーツ)ーAKC JVで受注。
国家監査庁ビル:30階建ての建物および関連施設(21.4億バーツ)

2021年:
フアマークスポーツコンプレックス:ボクシングトレーニングセンター(6億840万バーツ)ーCIS JVが受注
控訴裁判所第9地域:司法住宅(3億8,600万バーツ)ーAKC JVが受注
プーケット地方電力公社(PEA):事務所施設(2億1000万バーツ) – AKC JVで受注
タイ王国海軍兵站部:新司令部ビル(1億7,980万バーツ)ーAKC JVで受注。

2022年:
国立水資源事務所:本部(7億1,650万バーツ)ーNCRCE JVで受注。
PEAアカデミー、ナコンパトム:トレーニング施設(606 50万バーツ)ーAKC JVで受注
ソンクラー病院:9階建ての外来・救急棟(4億2,690万バーツ)ーAKC JVで受注

 今回の地震は、タイの人々に建物の安全性に対する意識を強く植え付けるとともに、建設会社の品質に対する信頼性を改めて問い直す機会となった。安全性を重視する消費者の間で、高い技術力と信頼性を持つ日系企業への関心が高まる一方で、品質管理に疑念が生じている中国系企業への不信感は今後広がることが予想される。

【翻訳/編集:そむちゃい吉田】

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