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【インド】ガタガタ・ボロボロのインド銀行界、でも大丈夫! -HSBC投信
配信日時:2018年5月2日 9時15分 [ ID:5023]

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インドのイメージ

 2018年5月1日、SBC投信は、インドからの2つの経済トピックス・レポートを伝えた。

1.問題山積の銀行界で注目を浴びる民間銀行セクター
2.コーポレート・ガバナンスに着目

 (レポート)問題山積の銀行界で注目を浴びる民間銀行セクター

 インド銀行界はこの数週間、株価変動に繋がる多くの問題に見舞われ続けている。インド準備銀行(中央銀行)による不良債権処理の枠組み修正、有力な国営銀行を巡る不正取引事件、大手民間銀行における経営陣の交代、そして最も新しいところでは、銀行セクターにおける現金不足の発生など、問題は多岐に亘る。今回のレポートでは、民間銀行が抱える問題への取り組みを取り上げる。

 大手民間銀行の経営陣交代

 4月上旬、インド3位の大手民間銀行では、中央銀行が同銀行の取締役会に最高経営責任者(CEO)の任期について再考するよう指示したレポートが届けられた後、CEOの退任予定が発表された。取締役会は2017年11月にCEOの任期を2021年6月まで延長すると決めていたが、これを取り消し退任時期を2018年12月に早めることを決め、世界的大手の管理職紹介会社が現CEOの後任を探すこととなった。

 この発表を受け、インド金融市場の反応はポジティブであったが、当社では、経営トップが代わっても、個人向け融資に重点を置き、法人向け貸出には保守的な同行の戦略に大きな変化はないと見ている。

 銀行界ではこの他にも、民間銀行最大手のCEOによる不適切な融資を巡り、メディアに大きく報道された。当局が現在調査に乗り出しているが、銀行側は同CEOをサポートする姿勢を表明している。たとえ同行の経営トップが今回の不祥事で交代することになっても、これによる大きな事業戦略の変化はないものと見ている。

 こうした報道を受けても、当社の主要民間銀行に対する基本的な見方には変わりない。上記2行は、個人預金残高が業界トップの水準を誇っており、今後もこれを一段と強化するものと思われる(市場はこの点を過小評価)。また、両行の株価は、資産の質が底打ちし、利益見通しも改善したにも拘わらず、バリュエーションに割安感があると考える。

 直近のネガティブニュースを受けても、インド銀行業界は長期的に見て魅力的な投資機会を提供していると当社では見ている。短期的には企業収益に影響が及ぶ可能性があるが、長期的な視点で見てインド銀行業界は、破産法の制定や国営銀行及び民間銀行におけるガバナンス構造の改善などを背景に、自己資本利益率(ROE)が持続的に改善する見込みがあると見ている。

 コーポレート・ガバナンスに着目

 インドの金融機関及びインド証券取引委員会(SEBI)はここ数年、コーポレート・ガバナンスの強化に注力してきた。しかし、最近の不祥事は、金融セクターのみならずインド産業界全体に、ガバナンスに関する新たな議論が不可欠であることを再認識させる結果となった。

 銀行セクターでは、2月に有力国営銀行における総額20億米ドルに上る不正事件が発覚した。これに加え、上述の大手民間銀行2行における報道が重なり、コーポレート・ガバナンスを本格的に見直す動きに拍車がかかることとなった。

 インドでは2011年以降、コーポレート・ガバナンスを含むESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮した責任投資について大きな前進が見られた。SEBIは現在、ムンバイ証券取引所とインド国立証券取引所の上場企業のうち上位500社にESG課題への取り組み状況の報告を義務付けている。現在では、インド株式指数Nifty50を構成する50社のうち62%がサステナビリティ(持続可能性)報告書及び年次報告書に付随する企業責任報告書(Business Responsibility Report:BRR)を開示している。

 SEBIは3月末にコーポレート・ガバナンス基準とESG要件の改善に必要となる新たな提案を承認した。変更事項の多くは2019年4月から実施される。これまでインドでは多くの会社でCMDという肩書を持つ経営トップが君臨してきた。CMDはChairman and Managing Directorの略で、「会長兼社長」(後者は銀行では頭取)を表す。今回の変更には、会長と社長の職務分離と社外取締役の任命比率の厳格化などが含まれている。

 インドにおけるコーポレート・ガバナンス基準と透明性は、今後、規制要件の厳格化に伴い改善が期待されている。

【編集:AJ】

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