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タイ、オーストリア、日本が舞台の映画ぬくもりの内側がバンコクでクランクアップ
配信日時:2019年11月23日 10時15分 [ ID:6005]

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長い間の撮影がクランクアップしたワット・ブッカローでの撮影風景 写真提供:Issey Film

 2019年11月11日、バンコク チャオプラヤー川沿いのワット・ブッカロー寺院で、日本各地とオーストリアからタイへと7カ月間に渡って撮影された映画「ぬくもりの内側」がクランクアップし、田中壱征監督が関係者への感謝とともにタイを後にした。

 田中壱征監督の新作映画「ぬくもりの内側」は、人生最期の生き方をテーマに、原作から脚本まで監督自身が手がけた。出演は、白石美帆、三田佳子、音無美紀子、島田順司、えのきさりな、野村真美、スギちゃん、森岡豊、黒坂真美、高樹澪、小野寺丈、高杉一穂、大林素子など豪華ラインナップで、千葉県、東京都、長野県、大阪府、鳥取県、沖縄県、オーストリア ウィーン、タイ バンコクと各地でロケが敢行された。

 ウィーンでは、日本・オーストリア国交樹立150周年記念の祝福を兼ね、一週間のロケを敢行。また、バンコクロケではタイ在住の日本の子ども達も参加した。

 物語は、余命宣告をされた登場人物たちが、残された人生をどう過ごして行くか? どのように人と関わり、愛を育んで行くのか? 生きてきた愛の証しを、最期に何をどう残して行くのか? など現実に横たわる問題に向き合いながら、終末ケア、緩和ケア・看取りという現代社会において重要なテーマを軸に、その根底には流れる「愛とぬくもり」を幅広い年齢層の心に訴えかける作品になっている。

 田中監督は、前作品「Tokyo Loss」で2017年アジア最大の釜山国際映画祭の釜山市友好作品賞を受賞。その後、台湾で開催されたアジア国際映画祭でノミネートを受賞。2018年には、米国ハリウッドにてオスカーアカデミー賞VIEWINGに日本人監督として公式参加。その後、米国ニューヨークで凱旋プレミアム上映を成功させ、10月には、フランス政府認定の社会功労奨励章文化芸術部門「オフィシエ勲章」受章するなど国内外で近年注目されている国際派の監督だ。

 田中監督は帰国を前にスワンナプーム国際空港で、見送りの関係者と記者たちに目頭を熱くしながら、感謝の意を述べた。「国内外の出演俳優様と所属事務所様、プロデューサー様と全スタッフの方々、協賛企業様と御協力いただいた多くの皆様、これまでの長い月日の間、誠に有り難う御座いました。皆様のお陰で、クランクアップまで辿り着くことが出来ました。私は今回、クランクアップ日の夜、20年前に住んでいたバンコク、スクンビットのアパートメントを久々に訪れることが出来ました。8階建て黄色の建物の7階の角部屋。

 私は2歳から両親がいなく、必死に育ててくれた大正生まれの祖父母も早くに亡くなり、既に日本には実家や帰る居場所すらなかったので、海外にいた時期は、日本に本帰国することが正直怖く思えていました。ニューヨーク在住をはじめ、海外貧乏生活とパックパッカーの繰り返し。ずっと地に足がついていなかった若き時代そのものでしたが、実はタイ在住時に「日本で再度頑張り抜こう」とやっと本帰国の決断が出来たんです。

 1999年に本帰国をし、まさか20年後の自分が今このバンコクで、クランクアップを迎えることが出来たなんて、全く夢にも思いませんでした。重ね重ね、今回の新作映画に関わって下さったすべての方々に深く深く感謝しかありません。そして20年前、カオサン通りで、先行きが全く見えなかったバックパッカーの自分に「タイでゼロから暮らしてみたらどうだ。新しい何かが見つかるかもしれない。」と心をちゃんと支えてくれた人生の先輩に感謝致します。

 来年度の国際映画祭出品に向けて、映画製作により精進を重ねて行く所存ですので、今後ともご指導ご鞭撻の程宜しくお願い致します。タイは第二の故郷。これからも時々戻って参ります」と語った後、タイ撮影関係者との名残を惜しみつつ、機上の人となった。

 幼い頃から若い時代に、多くの愛や存在を失って来た田中監督だからこそ、描くことができたのが今回の「ぬくもりの内側」というストレートなヒューマン映画なのかもしれない。


【取材・編集:TS】

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