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フィリピン・セブ『貧困スラム支援20年、NGO「HOPE~ハロハロオアシス」』コロナ禍で厳しさ増す
配信日時:2020年9月11日 6時00分 [ ID:6656]

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現地の様子 NGO「HOPE~ハロハロオアシス」提供写真 【支援活動の様子の動画】https://youtu.be/PoAeopRPz9w

 2020年9月、新型コロナウィルス感染防止のため3月中旬からマニラ首都圏で都市封鎖(ロックダウン)を始めたフィリピン。3月下旬からは、セブ州でも移動制限が始まり多くの人が仕事を失い収入が途絶えた。政府からの現金や米などの支給も行なわれたが、地域によっては配布する職員が不正を行い私腹を肥やす温床になってしまった。政府の支援も行き届かない。

 20年の長期にわたり、セブで貧困スラム支援を実行している国際協力NGO「HOPE~ハロハロオアシス」代表の松沼裕二さんに話を聞いた。

「こちらの都合や自己満足で一方的に与えるのではなく、貧困地域のスラムで人々と共に生活し、深く根ざし、協力し合い、思いを分かち合いながら、今、現地で求められている必要な支援、そして未来へと繋がる自立支援をめざし、草の根の活動を行っています。

 その支援地域のひとつが、町から離れた山奥の寒村のスラムです。ここは、車や公共機関では行けない辺鄙な地域です。町の喧騒から外れ、慌しい近代的な生活から取り残されたようなこの村で、人々は、素朴に平和に暮らしています。

 生活の糧は、山で獲れる恵みと、あとは、町に働きにいったり、山の果物や薪を売りにいったりしています。

 貧困のため学校に行くことができない子どももたくさんいます。そんな子どもたちは、家や仕事の手伝いや、下の兄弟の世話、また、町に行商に行ったりもします。毎日の食事も満足にとれないような、貧困に喘ぐ暮らしではありますが、それでも人々は、家族で寄り添い、あたたかい生活をし、そして、自分らが訪れると、いつも子どもたちが輝く笑顔で迎えてくれます。

 しかし、そんな山奥のスラムにも、新型コロナウィルスの渦がやってきました。このような閉ざされた地域に、感染が拡がったら、ひとたまりもありません。村は、すぐに封鎖されました。

 また、フィリピンは、現在もまだ感染が収まらず、世界最長のロックダウンが続き、厳しい制限や地域封鎖が施行されています。もちろんみんな仕事を失いました。現在、フィリピンの失業率は47%にも及んでいます。

 山奥のこの地域は、町から隔絶され、ただでさえ貧困にあえいでいるのに、仕事もなく、また、移動制限により、山で獲れるものを町に売りに行くこともできず、その生活は困窮しています。

 NGOでは、この山のスラムで、毎週、炊き出しを行っています。もちろん、贅沢な食事ではありません。時には、ほとんど具の無いルガオ(日本で言うおかゆ)だけだったりもします。でも、みんな、何かお腹にたまるものを食べたくて、ただそれだけで、とても喜んでいます。

 久しぶりのちゃんとした食事を心待ちにしています。みんな、飢えています。それが、今ここにある、現実です。

 それなりにうまくコロナをやり過ごし、なんだかんだいっても平和な日本には、関係のないことですか?

 世界のどこか遠い国で起こっている現実味のない出来事ですか?

 でも、これが現実なのです。飛行機に乗れば6時間程度の場所の、紛れもない、今、この瞬間の姿です。

 そんな厳しい現実のなか、幼い子どもたちは、おそらく、今、世の中で何が起きていて、どうして毎日のご飯がちゃんと食べられないのか、よくわかってもいません。

 もしできたら、そんな子どもたちの、心の叫びを感じて下さい。少しでも耳を傾けて、現実を直視してみて下さい。

 コップや食器を持って人々が集まってきます。 家のなかも外もそんなに変わりはないので、そのまま外で食べます。 そして、ここでは、世の中の流れに取り残され、政府の支援も届かず、奇跡も何も起きないまま、飢えて死んでいくとしても、人々は、それを受け入れるしかないのです。
いったい何に希望を見出していいのかもわかりません。

 そして、もちろん自分にだって、何も起こすことなんかできません。こんな小さなことしかできません。でも、こんなことしかできなくても、こんなことが、この、飢えた人々にとって、とても、必要なのです。

 とても、とても、大切なのです。

 目の前で消えていく命を、少しでも、できるかぎり、救いたい。ただ、それだけです。」

【編集:Eula Casinillo】

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