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【コラム】宗教は、人種や国籍を超えたところに存在するー韓国
配信日時:2022年6月7日 6時00分 [ ID:8050]

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韓国のイメージ

 1962年、ちょうど60年前、日韓正常化前に、大韓民国樹立14年目の政府より「文化勲章」を叙勲された日本人夫婦がいる。

 曾田嘉伊智・上野タキ夫妻だ(夫婦別姓になっているのは、韓国流の別姓なのか、フェミニスト的になのか、戸籍的に夫婦でなかったのかは不明)。
二人とも、敬虔なクリスチャンだった。嘉伊智は、日本で小学校教諭をした後、ノルウェーから台湾に滞在し、ドイツ人の通訳をしていた。そこで、酒に酔っ払い道端に倒れていた際に、韓国人に助けられた。その恩返しのために、38歳で韓国の地に辿り着いた。それが、1905年のこと。その翌年キリスト教に入信。タキは、彼より9年早く、韓国に渡り小学校の教師をしていた。タキは、もともと家族ぐるみの篤実なクリスチャンだった。1907年信仰によって結ばれた2人が結婚したのは神の導きだったとも言える(この頃はまだ、日帝時代)。

 2人は伝道師として活動し、3・1運動や105人事件の際には、率先して韓国人青年たちの釈放に尽力した。そして1921年、嘉伊智54歳の時、日本人が設立した鎌倉保育園京城支部の延長に就任し、第二次世界大戦・大戦前も戦中も戦後も、韓国人孤児たちの養育に携わった。

 嘉伊智の病気により、夫婦で韓国を離れたこともある。また嘉伊智だけが伝道のため日本に帰国したりもした。その帰国中、タキは孤児院を運営し、72歳で天に召された。嘉伊智は、その死期には間に合わなかった。これも神の配慮。育て上げた多くの孤児たちに見守られ、タキの亡骸は、韓国の土になった。

 タキの死のから11年後の1961年に嘉伊智は、韓国政府の特例を受け再び韓国の地を踏み、翌年91歳の人生を、韓国で終えた。彼の葬儀は、韓国社会団体連合葬として盛大に挙行され、2000人もの韓国人が参列。

 新聞は「国境と民族の壁を越えた真実の愛と奉仕」「朝鮮孤児の父逝く」などの文字で飾られた見送りだった。

 韓国大統領は、各宗教すべてにいい顔をするが、韓国はやはりキリスト教信仰が多くを占める。宗教者は基本、自分以外の誰かを救う使命があり、どんな人であっても「私はあなたが嫌いです」「それは迷惑です」という言葉を言えない。職業としても、NOを言えないということは過酷な精神状態が求められる。日帝時代から韓国、いや朝鮮の民は、少なからず日本人に恨の念を抱いていたのにも関わらず、文化勲章を受けることは本当に利他の心で、朝鮮の民に接した夫婦であったと思える。それは宗教上のことかもしれない。けれど、国境と民族を超えただけでなく、宗教を超えた人間としてなにをすべきかを示した日本人が、韓国にいたということではあるまいか。

【編集:fa】

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