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【11月19日は世界トイレの日】安全なトイレが重要な5つの理由
配信日時:2022年11月19日 8時00分 [ ID:8504]

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写真提供:国際NGOワールド・ビジョン・ジャパン

 毎年11月19日は、国連が定める世界トイレの日です。2030年までの新たな国際開発目標と「持続可能な開発目標:SDGs (Sustainable Development Goals)」のゴール6に「安全なトイレを世界中に」が掲げられており、トイレに関する課題の大きさ、トイレの重要性が注目されています。世界では23億人が改善されたトイレ(衛生設備)を使用できない環境で暮らしており、世界の人口の約8人にひとりにあたる8億9,200万人が屋外排せつをしています。また、安全な水やトイレの利用の面において、農村部と都市部で著しい格差が生じ続けています(UNICEF 2017)

 ワールド・ビジョンでWASH(safe drinking WAter, Sanitation and Hygiene)ナレッジ・マネジメント・キャパシティー・アドバイザー(水衛生に関する知識と理解を促進するアドバイザー)を務めるリンドセイ・ランジスタッフが、トイレおよび衛生設備を安心して利用できることが健康と開発の基礎となる5つの理由を考察しています。

■リンドセイスタッフからのメッセージ
排泄は人類共通で、生きる上で必要な行為であるにも関わらず、トイレについて考えることはあまり好まれていません。私たちの多くにとって、排泄やトイレの話は笑い話や恥ずかしい話のひとつとして触れられるだけです。しかし、家庭で基本的な衛生設備を利用できない36億人にとって、トイレがないことは笑いごとではありません。

 私は、私の子どもたちのトイレトレーニングを経験しました。急にトイレに行きたくなった時に駆け込めるように最寄りのトイレがどこにあるかを常に把握しておく必要に対してストレスを感じていました。

 私が最寄りのトイレを探すことにストレスを覚える一方で、世界中の多くの母親が、家に安全なトイレがない、あるいはまったくない環境での子育てに対するストレスに直面しています。しかも、そのような中、彼女たちは屋外や、必ずしも十分ではない施設での排泄が多くのリスクにさらされることを知った上で、子どもに排便方法を教えなければならないのです。

■安全な排泄場所が重要な5つの理由
 1:トイレは尊厳、プライバシー、安全を守ることができます。
屋外での排便や、トイレまで長距離移動しなければならない場合、女性や子どもは性的暴力、嫌がらせ、虐待の危険にさらされます。 清潔で個室が備わったトイレがあれば、尊厳を守りつつ、安全な場所で用を足すことができます。

 2:トイレは子どもの健康を守ることができます。
トイレは、排泄物を介して感染する、人々の命を奪う可能性のある細菌にさらされることを防ぎます。衛生状態が悪いと、子どもが命を落とす原因で2番目に多い下痢症や、栄養不良、発育不良などの慢性疾患のリスクが高くなります。

 3:トイレは就学の機会を守ります。
学校に十分な施設が備わったトイレがなければ、子どもたちの学びは困難になります。多くの女の子たちは初潮を迎えると中退したり、生理がある期間は毎月家に留まらざるを得ないため学校に行くことができず、重要な学習機会を逃してしまいます。

 4:トイレは家族やコミュニティの発展に貢献します。
劣悪な衛生環境は人々を貧困の連鎖におとしいれます。家に安全なトイレがあると、母親が体調の悪い子どもの看病をする時間が減り、経済活動にあてる時間を増やすことができます。 農村において基本的な衛生設備に1米ドル投資するごとに5米ドル以上の利益が得られ、生産性が向上し、医療費が節約されるという報告もされています。(COPENHAGEN CONSENSUS CENTER: WATER AND SANITATION ASSESSMENT PAPER)

 5:トイレは環境を守ります。
未処理の排泄物は、重要な地表の資源や地下水資源を含む、環境を汚染します。地下水は世界中の何十億人もの人々の飲料水の主要な供給源であり、衛生システムが不十分だとコミュニティ全体を危険にさらします。 世界全体で22億人が安全に管理された飲み水を使用できず、10人に1人あたる7億8,500万人が基本的なサービスを受けられません。このうち1億4,400万人は、湖や河川、用水路などの未処理の地表水を使用しています。(UNICEF 2019)

■ワールド・ビジョンは衛生環境・習慣向上のための活動を行っています。
 ワールド・ビジョンの支援は物品の提供や施設の建設、修繕だけではなく、トイレが長期間使用され、コミュニティの人々によって維持できるように、状況にあわせた行動変容を含む意識の醸成も合わせて行っています。ワールド・ビジョンは2021年に世界中の230万人の家庭の衛生設備を改善し、904の学校と478の医療施設にトイレを建設しました。

 世界トイレの日に、どうか、適切なトイレを利用できない世界中の36億人の人々の存在に目を向けてください。子どもたちが安全に排便できる場所を見つけるのに苦労している母親のために、私たちはその話題に対する恥じらいを乗り越え、行動に移さなければなりません。排泄はすべての人間にとって普遍的なニーズであると同時に、安全でプライバシーと尊厳が守られているトイレを利用することはすべての人間の普遍的な権利なのです。

【執筆:特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン 広報担当:加藤早紀】

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