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【インド】注目される2018年度予算案ーHSBC投信
配信日時:2018年1月27日 7時30分 [ ID:4896]

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インド

 2018年1月26日、HSBC投信は、インド政府が2月1日に発表する、モディ政権で最後となる予算案についてレポートを出した。2019年の下院総選挙や今後相次ぐ州議会選挙を前に、インド人民党(BJP)政権が取り組む改革を国民に売り込む最後の予算であり、注目を集めている。

 (レポート)モディ政権は、5年間にわたる現任期の最後の2018年度(2018年4月-2019年3月)予算案を2月1日に発表する。2019年の総選挙や今後相次ぐ州議会選挙を前に、インド人民党(BJP)政権が取り組む改革を国民に売り込む最後の予算となるため、その細部まで注目を集めるだろう。

 世界の大多数の国では予算は政府の会計報告にすぎないが、インドではここ十年以上の間、政府が新しい政策や改革に着手し、直接税と間接税の税率調整を行う機会となってきた。

 今回の予算案発表は特に微妙なものになりそうだ。政府は、税収が減少する中、拡大する財政赤字の抑制を目指しながらも、経済成長のモメンタム回復を目的に地方など重点分野への歳出増をなお考えているからだ。

 モディ首相は最近のメディア・インタビューで、「現政権の最後となる予算案発表を通じて、政府がポピュリズムに訴えることは避けるべき」との考えを表明した。

 今回の予算では、2019年の下院総選挙を控え、有権者(特に農村地域)にアピールする政策が打ち出されると期待されていただけに、モディ首相のこの発言はやや意外であった。

 地方の有権者はここ数四半期に亘り農業の疲弊に苦しんでおり、予算案には特にこうした有権者を和らげる政策や措置が盛り込まれるとの期待がある。首相発言はそうした状況の中で出たものだ。

 2017年度(2017年4月-2018年3月)のインド経済の成長率は、モディ政権が発足した2014年以来最低となりそうだ。政府統計当局によると、2017年度の国内総生産(GDP)成長率は6.5%の見込みで、2017年半ばに導入された国家規模の税制改革などを含め、減速には多数の要因がある。

 GDPの主要な要素である粗付加価値は6.1%成長となる見込みで、中央銀行の見通し6.7%より低く、2016年度の実績6.6%も下回ったと見る。製造業や農業が押し下げたと推測される。

 同時に、ここ数カ月はインフレ率が上昇しているため、利下げの余地はほとんどないとみられる。このことは、経済成長を支えるための政府支出が増額となる可能性を意味し、またモディ政権が公言している財政健全化の道筋に影を落とす可能性がある。

 仮に財政健全化路線が揺らげば、財政の節度や規律に対する政府コミットメントの信頼性が傷つくことになるため、予算案発表では財政赤字が焦点になるだろう。

 2017年度予算や財政責任・予算管理(FRBM)審査委員会の報告では、2018年度の財政赤字目標はGDPの3%と示唆されていた。しかし、インドの格付機関ICRAは2018年度の財政赤字はGDPの3.2-3.5%の幅になるだろうと予想している。これは税外収入が減少する中で歳出が当初予想を上回ったことなどから推計値が改定された2017年度並みの水準を見込んでいる。

 農村/地方圏の支援政策のほかにも期待される分野がある。「メイク・イン・インディア」政策に沿った国内製造業の強化支援策や、インフラ事業への投資拡大、教育や保健への社会的支出、法人税率引き下げ、証券投資にかかる短期キャピタルゲインの計算期間の1年から2年以上への変更である。

 間接税に関しては、2017年7月に導入した物品・サービス税(GST)に政府はすでにいくつか修正を加えている。ビジネスやサプライチェーンの混乱、一部価格の急激な上昇への不満、伝えらえている納税電子申告の難しさが背景にある。直近では1月に29物品と53サービスの税率を引き下げた。GSTの税体系を合理化するとともに、半年前の同税導入で打撃を受けた事業者の痛みを緩和する狙いだ。

 インドの政府予算案発表は通例、短期的に少しの騒ぎを引き起こす一方、経済には中期的に好ましい政策の方向性を与える。時折、予算がいくつか混乱を招くが、中期的には政権が変わっても主要経済政策の多くをつなぐ継続性の糸が予算に存在する。

 HSBC投信の投資プロセスでは、こうした継続性の流れを好ましいものと考えており、短期的なノイズがあっても、それに反応して行動することはしない方針としている。

【編集:AG】

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