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【フィリピン】飢餓ゼロプロジェクトについての考察最終回・プロジェクトへの下準備
配信日時:2023年7月4日 7時00分 [ ID:9039]

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フィンピンの人々(本文とは関係ありません)

 マルコス大統領が就任2年目に推し進める飢餓ゼロプロジェクトは、段階的に適応範囲を拡大して2027年までに運用システム構築を完成させるというものだ。最終的には貧困層を大幅に減らすことを目標としている。外部からは突然降って湧いたように見える政策だが、ここに至るまでにフィリピンでは様々な整備が実施され、それらがここに至る準備的な意味あいを持っている。

 まず、強引な手腕で知られたドゥテルテ前大統領の時代から、フィリピンでは大規模なインフラ整備が行われて来た。その効果として、マニラでは停電することが減り、地方でも農道などが整備され、物流も大きく改善した。そして、日本の一村一品運動を参考にした制度であるOTOP(One Town One Product)を設けて、地方の産業振興の下地を作っている。今回の飢餓ゼロプロジェクトは、そうしたインフラ的な整備が整ったからこそ実行に移されたという流れになっている。

 また、フィリピンは州知事が選挙で選ばれることのほかに、産業振興のために、6分野のエキスパート職を選挙で参事官に選任するという独特な地方行政制度がある。これは、エデゥサ革命で成立した民主化の流れで、地方行政での市民参加が前提とされている。しかし、弊害もある。州知事と各参事官の間での対立なども起きるため、調整や根回しなどのために大きな時間を要してしまうことだ。しかし、日本同様に島国であり、台風や火山噴火などの自然災害が多いフィリピンで、こうした民主的な制度は着実に市民の意識を変えて来た。
 
 教育制度の普及で人々の意識を変え、仕事への責任感や意識の向上をもたらした。それが最終的には国力を底上げする。そして、インフラを整えたことで、自国の発展が目に見えるようになった。そして、各地方ごと、あるいは各分野ごとに産業振興のサポートが行われる。そこには選挙を通して市民自身が参加をする。

 中央政府だけが一時的なばら撒きで人気取りに明け暮れるどこかの国とは違う、長中期的な計画を中央政府と地方政府、そして市民レベルまでの有機的な繋がりが機能し始めているからこそ、今回の飢餓ゼロプロジェクトが実施できるようになったということだろう。ここまで世界が注目する社会実験として書いて来たが、こうした事前の環境整備を見落とすと、判断も評価も誤ってしまうことになるし、まさにプロジェクトの成否を左右する要でもあるが、いずれにしてもこの飢餓ゼロプロジェクトの成否は、全世界が注目している。何も妨害などがないことを願っているし、その結果として多くのフィリピン神が貧困から脱却した姿が見られることを信じたい。

 4回に渡ってフィリピンの飢餓ゼロプロジェクトについて考察を重ねて来たが、国家として進むべき理想を掲げて、適切な準備と段階を経て、強い指導力を持って行使する。政治家として、指導者として、あるべき姿がこのプロジェクトを通して見えて来た。そして、今回の考察を巡らせる中では、わが祖国日本にも、こうした長期的展望をもとに理想を現実的な手段で実現してくれる政治家が現れてくれないだろうかという願いが湧き上がってきた。

情報協力:ツナミクラフト東山高志代表

【執筆:そむちゃい吉田】

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