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フィリピンのバランガイ選挙 ある立候補者に密着取材・ミンダナオ島オサミス発
配信日時:2023年11月5日 19時30分 [ ID:9348]

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Mr. Subrabas 7人の無所属立候補者を束ねてミラリンバランガイに立候補しました

 2023年10月30日 フィリピン全土のバランガイ選挙がありました。市長選挙、バランガイ選挙とも3年ごとに行われます。選挙運動期間は10月19日から28日までの10日間。

 バランガイとは最小行政単位を意味するフィリピノ語で、フィリピン全土に約4万2千のバランガイが存在します。ここミンダナオ島オサミス・クラリンには29のバランガイが有ります。クラリンの人口39,356人。平均年齢40歳で、男女比、女性が60%、男性が40%で女性の方が多いです。

 今回はクラリンの中に有る、人口2000人のバランガイKinangayとMialenを訪問してきました。両バランガイとも近年人口増加が著しい町です。各バランガイホールには立候補者のポスターが張られ、町のいたる所ころ、さらにはポスターが張られたトライシクルが何台も走っていました。

 立候補者のキャラバン隊による車列が街々を走っていきます。我が家の前も音楽をかけながらオートバイ、トライシクル、飾り付けられた車が何台も通って行きました。また各バランガイホールでは立候補者による選挙演説も行われ選挙熱が上がっていきます。

 私はMialenのある立候補者の話しを聞く機会を得ました。

Q:貴方はどんなお仕事をされているのですか?
A:詳しくはお話し出来ませんが政府機関で仕事をしています。
Q: 貴方の所信表明をお聞かせください。
A:いつか私にMialenの人々に奉仕する機会が与えられたら、公平を通じて貧困をなくすことでMialenの人々に貢献したいです。
貧困の主な原因の 1つは不平等です。教育を通じて貧困を撲滅する。飢えと渇きをなくすことで貧困をなくす。平和による貧困緩和。そして安定収入は貧困を解決します。
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 そう、フィリピン・クラリンでも貧困、貧富の差は大きな問題であり、庶民の最大の関心事なのです。オサミスエリアの最低日給は405ペソ、月収で10,500ペソ、日本円で約31,000円にも満たないのです。物価が日本の10分の1程度とは言え人々の暮らしは豊かとはいえません。娯楽も無く1日9時間、1週間6日間の勤務です。どのお店も6時には閉店し、日曜日は一斉に閉店。仕事帰りや家族でショッピングともいかないのです。

 新築の分譲住宅や車などは夢物語。家電製品やオートバイですら長期のローンを使い購入しています。毎日の食事も家族の様子を見ていますが本当に質素なものです。

質問は続きます。

Q: バランガイの人々は新しいバランガイチーフにどの様な期待・希望を持っていると思いますか?
A: Mialen住んでいるすべての人は生活に使える安くてきれいな水を必要としています。またゴミ処理もおおきな問題です。教育の充実もおおきな課題です。私はこれらを市議会に提案するつもりです。
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 社会インフラの問題は日本、世界各地と同じようです。実際水道が通っている家は少なく、我が家も井戸です。自宅に井戸が無く集合井戸に頼っている家も沢山有ります。またクラリンにはゴミ収集車が無く我が家は土地が広いのでゴミを埋めたり燃やしたりしていますが、庶民にとっては切実な問題です。

Q:バランガイ選挙に先立ち庶民に現金が配られているのを何度も見ています。合法なのですか?
A: 貧困のため、ここMialenでもKinagaiでも人々がDSWD(社会福祉開発省)から現金を受け取っているのです。そのお金は私たち市民の税金から出ているので、彼らは受け取る権利があります。もちろん立候補者が私的に寄付をしたり買収する事は強く取り締まられます。

DSWDとはDepartment of Social Welfare and Developmentで政府機関です。
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 私もずっと賄賂が横行していると思っていましたが、政府の施策として庶民に現金が配られているのです。今回のインタビューで長年の偏見がとれました。

 そして2023年10月30日朝7時からバランガイ選挙の投票が行われました。Mialenでは公立小学校が投票所になっていました。いつも登下校時間以外は閑散としている通りが人々で溢れかえっていて選挙への関心の高さがうかがえました。

 そして最後に驚いたのが、外国人でも永住権を取得し在留カードを持っていれば選挙権があるという事です。バランガイ選挙だけではなく大統領選など国政選挙に投票できるということです。

 日本でも永住資格をえて税金を納めている外国人には投票権を与えても良い時期に来ているのかもしれません。

 13日間の選挙期間も終わり、クラリンの生活は平穏を取り戻しています。少しでも貧富の格差が無くなり人々の生活が向上する事を願わずにはいられません。

【執筆:オサミス市在住13年目・上野浩一】

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