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インドの短期経済見通しに懸念<HSBC投信レポート>
配信日時:2019年12月13日 6時00分 [ ID:6034]

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図表2

 2019年12月12日、HSBC投信は、インドの短期経済見通しに懸念との経済レポートを発信した。

(レポート)インドの2019年7-9月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、インド準備銀行(中央銀行)による連続的利下げや政府の景気対策にもかかわらず、前年同期比+4.5%にとどまり、2013年以来の低成長となった。減速の主因は製造業の生産ペースの鈍化で、固定資産投資の落ち込みがそれに拍車をかけた。同四半期に見られた政府支出の大幅な伸びは、これらに相殺される結果となった。

 経済成長の減速は概ね予想されていたが、それが統計によって確認されたことで、投資家の間では、景気減速に歯止めをかけるための利下げ効果を疑問視する声が高まった。同時に、より波及効果の大きい金融政策と、より規模の大きい財政刺激策を求める声が強まっている。

 また、景気が鈍化しているにもかかわらず、中央銀行は投資家の期待を裏切った。12月5日の金融政策委員会(MPC)で、中央銀行は、総合インフレ率が目標中央値を上回ったことを指摘して、政策金利を据え置き、市場が期待していた6会合連続となる利下げを見送った。ただし、同委員会は、2019年度(2019年4月-2020年3月)の実質経済成長率見通しを6.1%から5.0%へ下方修正するとともに、景気回復に必要とされる限り金融緩和策を維持することを明らかにした。

 緩やかな回復に期待も
経済指標は10-12月期も引き続き強弱が交錯した状態にある。主要産業部門の低調な状況、石油および金を除く輸入の落ち込み、物品サービス税(GST)の税収の伸び悩みは、景気減速が鮮明になってきたことを示している。しかし一方で、輸出と自動車販売が底を打った兆候も見られる。但し、景気の先行きを占ううえで注目される信用残高の伸びは、10月に緩やかに上向いた後、上昇の勢いが後退し、回復の明確な兆しはいまだ見えてこない。

 今後については、2019年度(2019年4月-2020年3月)後半および2020年度(2020年4月-2021年3月)には景気は緩やかな循環的回復を見せるとHSBC投信では予測している。その根拠としては、利下げ効果波及の促進策、ノンバンク金融事業会社(NBFC)向けの流動性供給強化策、NBFCの流動性不足によるシステミック・リスクの抑制を含む金融緩和策、さらに法人税率の引き下げ、政府による不動産部門支援策、公共投資の拡大などの財政面からのてこ入れなども挙げられる。

 しかしながら、ノンバンクの流動性危機を中心とする信用不安問題、金融緩和策の限定的な波及効果、脆弱な財政基盤、設備投資と雇用の落ち込み、世界的な需要・貿易の先行きへの懸念を考慮すると、実際の成長率は見通しを下回る可能性がある。

 総合消費者物価上昇率は、野菜や豆類を中心とする食品価格の値上がりにより、中央銀行の中期目標値である4.0%を上回ったが、食品と燃料を除くコア・インフレ率は安定している。HSBC投信は、短期的には国内需要の低迷によりインフレ・リスクは抑制され、食品価格への供給面からの上昇圧力も徐々におさまると予想している。

 財政上の制約
中央政府の財政が悪化するリスクは高い。歳出見通しに対する歳入不足(すなわち財政赤字額)は2019年度前半に、ほぼ予算上の赤字額の92.6%に達した。これは昨年並みのペースである。ただし、中央銀行から国庫に移管された配当金を除外すると、赤字額は予算の113%に上る。

 税収総額の伸びは前年同期比で1.5%と、過去10年で最低の伸びにとどまったのみならず、予算編成時に設定した最高目標の17%をも著しく下回った。主な理由は間接税の税収減で、中でも物品サービス税(GST)は政府目標を大きく割り込みわずか2.3%増だった。直近の税収には最近の法人税率引き下げは含まれていないにもかかわらず、法人税などの直接税の税収も大きく落ち込んだ。

 HSBC投信は現時点では、法人税率引き下げの歳入への影響について、当初の見込みより小さくなるという見方を変えていないが、経済成長の減速が直接税の税収に及ぼす影響は予想より大きくなる恐れがあると懸念している。

 一方、歳出面では、農家所得向上計画に伴う支出は受益者の確定作業の遅れがネックとなって実際の支払い額が予算額を相当下回ったままだが、公共投資の増加によって、歳出規模は拡大傾向にある。

 政府は、競争激化による収益悪化に苦しむ移動通信事業会社への一時的な救済措置として、2019年度および2020年度分の周波数使用料の国への納付について繰り延べを認めると発表した。この2年間の支払い猶予は、インド最高裁が通信会社に過去に滞納してきた周波数使用料の支払いを命じたことを受けたものだ。最高裁の命令が実行されれば今年度の歳入が増えるのは確かだが、翌年度の歳入は、第5世代移動通信(5G)周波数の入札がなければ、再び減少する恐れがある。

 明るい話題としては、政府による政府保有株式放出計画の拡大がある。それが財政状況の短中期的な改善をもたらすと期待されている。具体的には、国内2位の国営石油精製会社と国内1位の海運会社の全保有株を売却する。他の国営企業の一部については株式の政府保有率を51%以下に減らすことも決定した。

【編集:KO】

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