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【タイの裏事情】タイで売春合法化が検討される理由(2) 〜性産業は人権問題か経済問題か
配信日時:2023年3月27日 17時00分 [ ID:8778]
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タイでは現在、1996年に制定された売春防止法に代わり、売春を合法とする新しい法案が協議されている。そこで協議されているのは、性産業に従事し売春をしている人々の人権を守ること。世界に目を向ければ、人権を重視した西欧諸国を中心に売春が合法化されている国は少なくない。タイもそれらの国に倣って、現実に即した法律を制定し彼ら彼女らの権利を保護しようというものだ。
タイでは何世紀にもわたって売春は一般的な職業だった。アユタヤ王朝 (1351〜1767) の時代 、売春は合法で課税もされていた。そして、売春宿の運営は県などの自治体によって行われていた。タイで売春について文書化された歴史は、少なくとも6世紀前にさかのぼり、中国の航海者 Ma Huan (1433年) とその後のヨーロッパの訪問者 (Van Neck, 1604; Gisbert Heeck, 1655 など) によって明確な記述が見られる。
ラーマ5世が1905年に奴隷制度を廃止したとき、女性たちは生活の困窮から、生き残るために売春を始めた。そのため、1908年に売春を合法化し、セックスワーカーが医療を受けられるようにする法律が可決された。また、第二次世界大戦中の日本による占領と、第二次インドシナ戦争中の米軍による「休息とレクリエーション」施設としてタイが利用された歴史もある。
20世紀には、1908年の伝染病予防法や1966年の娯楽施設法など、性産業に関するさまざまな法律が可決された。1950年代、時のサリット・タナラット元帥は、売春を犯罪化することで罰金と懲役を課する道徳キャンペーンを開始。健康診断と道徳的リハビリテーションのシステムが導入され、公的な責任の焦点は人身売買業者や調達者から売春婦自身に移された。国連の圧力もあり、タイで売春自体が違法化されたのは1960年だった。政府は、セックスワーカーの虐待を防ぎ、性感染症の蔓延を抑えるために、セックスワーカーを監視するシステムを制定した。
タイには古くから続く伝統的な法律文書があり、売春はさまざまに定義され、普遍的に禁止されていた。伝統的な法典の時代は20世紀初頭に終焉を迎えたが、これらの初期の法典は、現代の法律の文言と精神の両方に大きな影響を及ぼしていることは忘れてはならないだろう。そして、1960年制定のこの法律は1996年の売春防止法が成立したことによって廃止された。この法律の下では、売春自体は違法ではないものの、売春宿の経営、売春の斡旋、公共の場所等での迷惑行為が違法とされている。
ここまで情報を整理してきて意外だったのは、タイでは現在も売春行為自体は違法とはされていないことだろう。法的には管理売春や斡旋行為、そして道端などでの客引き行為を違法行為としている点だ。こうしたことから、現在討議されている合法化案では、法的に抜け落ちている(とみなされる)従事者たちの人権保護が大きな目的となっている。そして、闇経済に落とし込まれていた巨大な利益を表に引き上げることで、一つの税収源としようとしていることが見て取れる。
(つづく・3月28日17時配信予定)
【執筆:そむちゃい吉田】
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