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中国の不動産バブル崩壊、外資にツケを回す作戦は成功するのか?
配信日時:2023年8月25日 6時00分 [ ID:9163]

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 2023年8月、中国の不動産業界で最大手の恒大グループが連邦破産法15条を申請したことが、世界中の投資家に少なからず衝撃を与えた。この申請は、中国が不動産バブル崩壊のツケを外資に回そうとしていることを示している。しかし、この作戦は本当に成功するのだろうか? そして、中国経済にどんな影響を及ぼすのだろうか?

不動産バブル崩壊の背景

 中国の不動産バブルは、長年にわたって膨らんできた。中国政府は、経済成長を維持するために、低金利や緩やかな規制などを通じて、不動産市場に大量の資金を流し込んだ。その結果、不動産価格は急騰し、多くの企業や個人が借金をしてまで物件を購入した。特に恒大グループは、中国全土に巨大な開発プロジェクトを展開し、2兆4000億元(約47兆円)もの負債を抱えることになった。

 しかし、2021年から中国政府は、不動産バブルのリスクを抑えるために、金融規制や貸付制限などを強化した。これにより、不動産市場は冷え込み、多くの企業が資金繰りに苦しみ始めた。恒大グループも例外ではなく、債務返済に行き詰まり、株価や信用格付けが急落した。

外資にツケを回す作戦

 恒大グループが連邦破産法15条を申請したことは、外資にツケを回す作戦の一環と見られている。連邦破産法15条とは、米国以外の国で破産手続きを行っている企業が、米国内で保有する資産や訴訟などに関する処理を行うために利用する法律である。恒大グループは、米国で発行した債券や株式などを保有する外資からの請求や訴訟を防ぐために、この法律を利用したと考えられている。

恒大グループは、地元政府や国有企業などの支援を受けて経営再建に向かう可能性が高い。しかし、その場合でも外資への債務返済は困難である。そこで、恒大グループは、外資に対して債券の株式化や支払期限の延長といった債務再編を提案することで、損失を押し付けようとしているのだ。

 この作戦は、中国が日本のバブル崩壊後経済の研究から学んだ最大の教訓に基づいていると言われている。日本は、バブル崩壊後に外資に国内企業をたたき売ることで決着をつけようとしたが、その結果、国内資産の流出や技術の喪失などを招いた。中国は、この失敗を繰り返さないために、外資に損をさせることで決着させるべきだという考え方を採用しているのだ。

中国経済への影響

 中国が外資にツケを回す作戦を実行することは、中国経済にどんな影響を及ぼすのだろうか? 一つは、海外からの投資や資金流入が減少することである。外資は、中国の不動産市場や金融市場に大きなリスクが存在すると判断し、中国から資金を引き揚げるか、新規投資を控える可能性が高い。これは、中国経済にとって大きな打撃となる。なぜなら、中国は外貨準備や対外債務などのバランスシートが悪化しており、海外からの資金流入に依存しているからだ。

 もう一つは、国内の信用システムや消費者心理が悪化することである。恒大グループは、不動産開発だけでなく、金融やサービスなど多岐にわたる事業を展開しており、多くの関連企業や個人と取引関係にある。恒大グループが債務不履行に陥れば、その影響は連鎖的に広がり、他の企業や個人も資金繰りに苦しみ始める可能性がある。また、恒大グループから物件を購入した消費者も、引き渡しや返金が遅れたり、品質が低下したりする恐れがある。これらのことは、国内の信用システムや消費者心理に悪影響を与えることになる。

まとめ

 中国の不動産バブル崩壊は、世界経済にも大きな影響を及ぼす可能性がある。特に恒大グループは、外資にツケを回そうとしていることで、国際的な信頼や協調を損なう恐れがある。中国政府は、不動産市場の安定化や経済成長の維持に向けて、適切な対策を講じる必要があるだろう。

【編集:LF】

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