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【タイ】知られざる得度式の前後と裏事情
配信日時:2024年4月14日 8時00分 [ ID:9661]

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振舞われた朝食を前に読経する僧侶たち

 2024年4月7日、前日に無事に得度式を終えた家族だが、それまでの準備や式翌日に成すべきことがまだあった。今回は身内でないと見えなかったタイ伝統の出家にまつわる儀式の裏側をレポートする。

儀式の後で

 新たに僧侶となった彼は、本来ならこのまま寺に住むことになるのだが、先述の通りこの寺へは得度式のために来ただけだ。そのため、一行は一度家に戻ってから村の寺に向かう。ここまでの事は、タイ好きな旅行者にも知られていることが多いだろう。しかし、儀式はまだ全て終わったわけではなかった。翌朝、新らたな僧侶への初めてのサイバーツ(托鉢)が行われるのだ。

 儀式を終えた翌7日、家族たちはまた暗いうちから料理の仕込みを始めていた。そして、午前8時少し前、村の寺に住む僧侶たちと新僧が一緒に家にやってきた。位が高そうな高齢の僧侶の前に新僧と家族が居並ぶ。ひと通りの読経と説法が終わると、一度外に出て食事が振る舞われる。そこには得度式の最中のような緊張感は全くなく、冗談も交えた会話が弾む。それもそのはず、僧侶たちは皆顔見知りみばかり。当人も昨日のような緊張した面持ちはなく、幾分か笑顔が見られるようだ。僧侶たちは、食事を終えると再び母屋へと戻り、また読経が唱えられた。そして、これで全ての儀式が完了したことになる。

出家事情

 新僧は、きょう(正確にはきのう)から寺での修行の日を送ることになる。彼の場合は、約1ヶ月ほどだが、短い人では3日とか1週間という人もいるし、逆に雨季に合わせて約3ヶ月から半年間出家する人もいる。その辺は特に決まりはなく、本人と家族の都合で決まる。また、修行する寺も地元には限らず、住職が知り合いだったり、有名な高僧のもとで学びたいと言って、遠く離れた地に赴く人もいる。

 また、親族が亡くなった時には、近隣住民や親族の子ども達も出家することがある。かく言う私も、妻の従兄弟がバイク事故で急逝した時に髪を剃ったことがある。その儀については、タイ語で「サマネーン」という小坊主としてであり、今回のような正規に出家したことにはならないそうだ。その為か、わたしはその日一日だけ寺で過ごしただけで、泊まることもなく帰宅している。一緒に剃髪した小坊主くんたちは、一晩お寺に泊まったようだったが。

今回の費用

 世知辛い話になるが、現実として今回の得度式にいくらかかのか。やはり気になるので、大まかに聞いてみた。日除テントやテーブル、椅子、食器などは、村に常備されていたものを使い安い費用だったという。そして、暗い中から大音響で毎朝起こしてくれた大スピーカーや楽団には約1万バーツ。一番出費が大きかったのが、前日から翌日まで3日間に渡って振る舞われた料理の具材とお酒やジュース類で、3〜4万バーツほど。大まかな計算だが、締めて5万から7万バーツだったらしい。しかし、来賓からはそれぞれご祝儀ももらっていたので、多少は負担も軽くなっていたはずだ。しかし、それは全て家長である祖母へと贈られたので、出資した当人たちに戻されることはなかったようだ。

 そうした費用は、今回母親だけでなく、5人の姉妹が分け合って負担した。とはいえ、そのほとんどが北欧フィンランド に住む2番目の妹(母親の姉)が出資。その為か、現場での仕切りもほとんどを彼女が仕切っていた。また、彼女のご主人の友人たちも駆けつけたので、日本人である自分と合わせて田舎の村としては、国際色豊かな式にもなり、本堂の周りを踊りながら練り歩いた際には、多くの注目も集めていた。ちなみにわたしは撮影もあったため、ほとんど踊りの行列には加わらなかった。それに今では普通にタイ人として見られているので、知らない人からは日本人とは気付いてもらえない。

 この家族の場合、たまたま外国に住む叔母によって出家ができたが、そうでない場合はこのような式をすることなく、寺に入る人もいる。それでも、無料で出家できるわけではなく、幾ばくかの費用はかかるそうだ。地獄の沙汰も金次第と言うが、タイでは出家の式も金次第というわけだ。

【取材:そむちゃい吉田】

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