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日本の援助による比初のエコ空港、環境保全と社会開発の両端を担えるか
配信日時:2018年12月27日 10時45分 [ ID:5402]
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2018年11月末、フィリピン中部ボホール州に、ボホール空港(パングラオ国際空港)が満を持して開港した。モーションセンサー照明での節電や必要電力の3分の一を太陽光発電でまかなうなど、フィリピン初のエコフレンドリーな空港として、多くの現地メディアを賑わせている。この空港の建設は、JICAの円借款※事業を通じた日本の国際協力によるものだ。
ボホール州の大部分を占めるボホール島は、世界自然遺産にも登録されている奇観チョコレートヒルズを擁する。空港ができたパングラオ島はボホール島と橋で結ばれており、美しいビーチとサンゴ礁で知られる。どちらもセブ島などと比べると観光地化が進んでおらず、手付かずの自然が残りフィリピンの人々の素朴な暖かさを感じることができるデスティネーションとして、観光客が増加しているという。
同州を訪れる観光客は、2001年から2014年の間に81,040人から455,155人に増加(出典:JICAによる『フィリピン国新ボホール空港建設に係る持続可能型環境保全プロジェクト 業務完了報告書』より)。州都タグビララン市(ボホール島)にはタグビララン空港があるが、急増する航空需要に耐えうる施設ではなく、待合室に入りきらない乗客が外にあふれてしまうような状況だった。同空港は市街地の中心にあり、それ以上の拡張は困難だったことから、フィリピン政府から日本政府への要請により新空港が建設されることになった。新空港では、これまでの2倍以上の旅客を収容できるという。
空港の建設にあたっては、事前に綿密な調査が行われている。収容旅客数の増加はすなわち観光客数の増加を意味し、観光客数の増加は往々にして環境破壊をもたらすものだ。観光資源でもある美しい海とサンゴ礁を守るためには、観光業に携わる住民の環境保全への意識が不可欠である。しかし、ボラカイ島の海洋汚染対策としての観光客立入り制限が記憶に新しいように、実際には汚水をそのまま海に垂れ流すことが環境悪化を引き起こす、との認識がない観光業者も依然多いのが現状だ。
そこで、地元住民を巻き込んだ環境保全のためのサブプロジェクトが同時に行われていることに注目したい。自然本来の美しさを守り堪能しながら環境保護意識を高めるエコツーリズムを、地元観光業者とともに商品化する試みや、環境保全対策およびモニタリングにあたる現地自治体の職員の研修などがそうだ。きめの細かい援助方針は他国と異なる日本の国際協力の特徴だと言われているが、これはまさにその一例と言えるだろう。
ドゥテルテ大統領も「世界へ開かれたグリーンゲートウェイ」としてその開港を誇ったと言うが、本当の意味でエコファーストな空港であることがわかるのは、観光客が増加していくこれからだろう。自然環境を守りながら、観光客にも地元住民にもそれぞれ利益がもたらされる「持続可能な開発」の達成を見届けるのは、出資者である我々の責務でもある。
※円借款とは、日本政府から返済能力のある発展途上国政府に対する、低金利で融資期間が長い開発資金の貸し付けを意味する。主にインフラ整備が目的とされる。返還の義務のない無償資金供与に比べ、相手国の自立が促されると言われている。一例として、インド、デリーの地下鉄も、この円借款事業で建設されている。
【編集:山田愛】
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