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ラオス南部サワンナケート紀行(2)〜天国地区という名の町
配信日時:2023年6月14日 7時00分 [ ID:8989]

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国境越えのバスでメコン川を渡る。(そむちゃい吉田撮影)

 2023年6月5日から4日間をかけて、3年ぶりにラオス南部のサワンナケートを訪ねて来た。新型コロナの間にこの閑静な街がどう変わり変わらずにいたのか。タイ北部チェンマイからタイ最東端のウボンラチャタニーへは約17時間の長い道のりだった。そこからさらに2時間半かけてムクダハーンに到着したのはお昼少し前だった。

 普通はバンコクからの夜行バスで来て、国境越えのバスに乗り換えるので、かなりの混雑になる。しかし今回は、その時間帯では無いのでバスターミナルはのんびりムード。自分もそのままバスに乗り込むつもりだったのだが、手持ちの現金が少なくなっていたので、ATMでおろさないといけない。しかし、ターミナル内も周辺も見当たらない。トゥクトゥクの運転手に聞いたら、全てなくなってしまい今は通りそいのショッピングセンターにあるという。仕方ないので、そのトゥクトゥクに乗り、このまま友好橋に向かうことにした。バスターミナルから友好橋まで100バーツ。他の奴は150バーツだけど、タイ語を話すお前さんだからこの金額でいいよ! とドヤ顔で言っていたが、果たしてどこまで本当なのやら。

 以前は値段交渉も楽しみの一つとしていたのだが、いつのころからか余程「あれ? 高くね?」と思った時以外はそのまま乗るようになった。面倒くさくなったこともあるが、タイ語で会話していると吹っかけられることも少ないからだ。特にこうした地方では、吹っかけられることはほとんどない。バスでは混み合う友好橋での出国手続きも、誰もおらずにスムースに完了。バスターミナルで先に買ってあったチケットもそのまま使える。ちなみに直接来てしまっても、チケット売り場があるので、心配ない。通行料は一人40バーツだが、時間によっては5バーツの時間外手数料とやらが加算される。わたしもちょうどお昼時だったため45バーツ払わされた。出国手続き後、ターミナルで乗るはずだったバスに乗り込んで、いよいよ3年ぶりにメコン川を渡る。あいにくの曇り空だったが、国境越えはいつもワクワクするものだ。そして、ムクダハーンから出入国手続きの時間も含めて、約1時間ほどでサワンナケートのバスターミナルに到着した。

 ラオス南部の町サワンナケート。天国地区。あるいは、天国の町という意味の地名だ。その名の通り、メコン川を眺めていたり、町を歩いても、本当に時間がゆっくりと流れているような気持ちになり、天国のようなところと言っていい町だ。しかし、残念ながらこれといった観光スポットはない。町とは離れたところにカジノ「サワンベガス」があるが、それくらいだ。空港もあるが、ここに来る旅行者は非常に少ない。もっと南のラオス第2の都市パクセの方が、旅行者もビジネス関係者も多い。とはいえ、ここサワンナケートからはベトナム中部のダナンへの国際バスも発着しているので、欧米人旅行者には好む人もいるようだ。

 バスターミナルからゲストハウスへの道すがら、ラオス人の子どもたちが「Good morning!」と英語で声をかけてきた。こちらも笑顔で応える。思えば、2000年にラオスを初めて訪れた時、ビエンチャンでも同じ事があった。そして、かつてビエンチャンに住んでいた時もよく通学の子どもたちから挨拶された。そんな純朴なラオスが今でもあった事は何よりも嬉しかった。その首都ビエンチャンも今は、メコン川の堤防がきれいに整備されてナイトマーケットが設営されている。整備前には、堤防に沿って何軒もの仮作りの食堂が並んでいて、多くの旅行者たちがメコン川の夕陽を眺めならラオスのビールを傾けていたものだった。

 新型コロナでタイとの国境が封鎖される直前まで、サワンナケートにはそんな仮作りの食堂があって、好きで何時間も川を眺めていた。そこはわたしにライターになるきっかけをくれて、導いてもくれた写真家太田享氏も愛した場所でもある。3年前、最後にここを訪れた時には、護岸工事が始まっていた。その工事はたぶん終わっているだろう。川沿いがどう変わっているのだろうか。きっと多くが失われているのではないか。しかし、チェンマイから足掛け丸二日、約20時間以上の旅の末にサワンナケートのゲストハウスに辿り着いたわたしには、外出する体力も気力も残っていなかった。

つづく

【執筆:そむちゃい吉田】

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